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肥満、肥満症、メタボリックシンドローム(メタボ)――。どの言葉も同じように太っている人をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、これらの意味は少しずつ異なります。この記事では、肥満症の原因や治療法とともに、肥満やメタボとの違いについてもお話しします。
肥満は体に脂肪組織が、必要以上に存在している状態です。
脂肪組織とは、いわゆる体脂肪のことで、体内でエネルギーを蓄えたり、体の内部を保護するクッションの役割を果たしたりしています。さらに、脂肪組織の細胞からは、食欲や炎症などにかかわるサイトカイン(細胞が作り出す生理活性物質)が分泌されていて、肥満の状態ではそれらの作用が、健康に良くない影響を及ぼすように変化してしまいやすいことも分かっています。
一方、肥満であっても肥満に伴う健康リスクが生じていなければ、医学的な対処(治療)が必要な疾患(病気)ではありません。それに対して、肥満に該当し、かつ、肥満のために健康に悪影響が生じている、または悪影響が生じるリスクが高い状態の人は「肥満症」に該当します。つまり、肥満症は医療の対象となる疾患(病気)ということです。
肥満症は、慢性疾患(経過の長い病気)の一つです。対処(治療)をせずにいると、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化などが進行しやすくなります。それらの病気は、ほぼ無症状で進行し、ある時突然、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる発作を引き起こすことがあります。また、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、女性の月経異常などの、症状に現れる病気や異常のリスクも高まります。
医学の専門的な肥満と肥満症の定義は以下のとおりです。
<肥満の定義>
脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI=体重[kg]/身長[m]2)≧25のもの。
<肥満症の定義>
肥満(BMIが25以上)で、肥満による11種の健康障害(合併症)※表1が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合。減量による医学的治療の対象になる。BMIが35以上は高度肥満症。
体の脂肪は、それが溜まっている場所によって、皮下脂肪と内臓脂肪に大別されます。それぞれ文字どおり、皮下脂肪は皮膚の下に蓄積している脂肪のことで、内臓脂肪はお腹の中の内臓の周囲に蓄積している脂肪のことです。
両者は単に蓄積している場所が異なるだけでなく、性質も異なります。例えば、脂肪細胞が作り出す食欲や炎症などにかかわるアディポサイトカイン(アディポカイン)は、内臓脂肪から活発に分泌されていて、糖代謝や脂質代謝(血糖値や血清脂質の変動)などへの影響が大きく現れます。
メタボリックシンドローム(メタボ)は、内臓脂肪が過剰に蓄積している状態(内臓脂肪型肥満)に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常などの代謝異常が複合している病態です。これらの危険因子が同時に存在することで、心血管系の健康に悪影響を及ぼし、動脈硬化を進行させるリスクが高まることが知られています。
内臓脂肪が過剰に蓄積しているか否かは、内臓脂肪の面積が100㎠以上か否かで判定します。ただし、内臓脂肪の面積を正確に測定するには大掛かりな器械が必要なため、健康診断などではウエスト周囲長の測定を代用しています。
日本人ではウエスト周囲長が、男性は85cm、女性は90cm以上の場合、内臓脂肪面積100㎠以上に該当することが多いことから、この値が特定健診(いわゆるメタボ検診)にも採用されています。
BMIが肥満の判定基準である25以上か未満かにかかわらず、ウエスト周囲長が上記の基準以上であり、かつ、内臓脂肪の蓄積に伴う健康障害(血糖値、血清脂質、血圧の異常)が起きている場合に、メタボと判定されます。
肥満症の原因はさまざまな因子が複雑にからみあっています。肥満症の基盤にある肥満についても、以前は食べすぎ・飲みすぎ、運動不足など、怠惰な生活習慣が原因とする考え方が少なくなかったですが、現在はそのような考え方が改められるようになりました。
実際のところ、肥満は遺伝的な背景、雇用状況や教育歴、医療にアクセスしやすいか否か(医師に診てもらいたい時にすぐに受診できるか)、運動を行う環境(場所や時間)があるか、さらには加齢、ホルモンバランスの変化など、本人だけでは改善し難い事がらが関与して生じることが明らかになっています。これらを背景として、今では肥満や肥満症を個人の自己責任の課題とせず、社会的な視野でも解決すべき課題として、対策が模索され始めています。
ストレスと肥満度(BMIの高さ)との間に正の相関(ストレスの自覚が強いほどBMIが高い)があることが報告されています。この関連の考えられるメカニズムとして、ストレスが強いと生活習慣が乱れがちになることや、ストレスによって代謝を悪化させるようなホルモンの分泌が増え、体重が減りにくい状態になってしまうことなどが考えられています。
長時間の勤務や不規則な交代勤務などが、肥満のリスクの高さと関連のあることが報告されています。これには、食事を摂るタイミングが仕事に左右されやすくなることなどが関係していると考えられています。
睡眠時間が短いことと肥満リスクとの関連も報告されています。これには、起きている時間が長いために食事の摂取回数が増えがちになることのほか、短時間睡眠によって食欲抑制ホルモン(レプチン)の分泌が減り、食欲刺激ホルモン(グレリン)の分泌が増えるという変化が生じることの影響などが考えられています。
肥満の原因の一つとして、加齢も挙げられます。加齢によって体の諸機能が衰えていくとともに代謝も低下し、身体活動量も減っていくことが多いものです。そのため消費エネルギー量が減っていくので、若いころと同じ量を食べていると太りやすくなります。
また、とくに女性については、更年期を境に性ホルモンの分泌が大きく変わる影響で、体重が増えやすくなります。
ここまでに取り上げたような、さまざまな原因が重なり合って生じている肥満は、「原発性肥満」と呼ばれます。それに対して、何か特定の原因があって生じる肥満は「二次性肥満」と呼ばれます。
二次性肥満に該当する肥満として、一つの遺伝子の機能不全が原因である肥満、および、他の病気や状態の影響による肥満が挙げられます。後者には、例えば甲状腺機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症、薬剤(向精神薬、ステロイド他)の副作用などが該当します。
この項目では、体重増加の主な原因について解説しました。肥満や肥満症にはさまざまな原因があることをお分かりいただけたのではないでしょうか。
重要なことは、体重が増加した結果、肥満症に該当する状態となっている場合は、原因の種類や症状の有無にかかわらず、医学的な治療が必要だということです。減量の基本は食事療法と運動療法です。しかしそれだけでは効果が不十分な場合は、医師の判断により薬物療法などが治療の選択肢となります。
どんな病気でも、治療に際しては診断が重要です。医学的に治療すべき肥満、つまり肥満症として診断する規準については先ほども書きましたが、もう一度記しておきます。
<肥満症の診断>
肥満と判定されたもの(BMIが25以上)で、肥満による11種の健康障害(合併症)※表1が1つ以上ある場合か、内臓脂肪型肥満の場合。
※内臓脂肪型肥満の診断
ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査などによって内臓脂肪面積≧100㎠が測定されれば内臓脂肪型肥満と診断される。
なお、肥満症の基盤にある肥満については、BMIに基づいて以下のように分類されています。世界保健機関(WHO)の基準では、BMI30以上を肥満、25~30の間は「Pre-obese(過体重)」としているのですが、日本人はBMI25以上でも健康リスクが高くなるため、BMI25以上が肥満とされます。
肥満症は、肥満に伴い健康に悪影響が生じている、またはそのリスクが高くなっている状態です。ですから肥満症の治療において、体重を減らすこと、つまり減量は、治療の手段であって目的ではありません。治療の目的は、肥満に伴う健康への悪影響を取り除き、生涯にわたって健康的な生活を送れるようにすることです。
肥満症の基盤にある肥満の改善(減量)に際して、体重(BMI)をどこまで下げるかという治療目標は、年齢や健康状態などによって、患者さんごとに設定されます。高度肥満症でない場合、まずは3~6カ月で3%の減量を目指すことが多いです。
摂取エネルギー量を減らすことは、減量の基本です。肥満症の患者さんでは、摂取エネルギー量を25kcal×目標体重(kg)以下、高度肥満症では20~25kcal×目標体重(kg)以下にすることが多いです。摂取エネルギー量のうち50~65%を炭水化物(ごはんやパンなどの主食)、13~20%を蛋白質(赤身肉や魚などのおかず)、20~30%を脂質(肉の脂身や油脂など)から摂ると良いとされています。
運動療法は、体重の増加を抑制する方法として重要とされ、減量という点での効果は限定的です。ただし、運動療法によりたとえ体重が多く減らないとしても、肥満症により生じる健康への悪影響は抑制されることが分かっています。体重管理と代謝の改善には、有酸素運動が良いとされています。ややきついと感じる運動強度で、1日30分(小分けにした合計でもOK)以上、週に150分以上が一つの目標。これに筋力トレーニングを加えると、より好ましい影響を期待できます。
食事・運動療法の効果が不十分な時、薬物療法が検討されます。医師から処方される薬としては主に、GLP-1受容体作動薬という注射薬が使われています。この薬は、食欲を抑えたり、胃から腸への食べ物の排出を遅らせたりする作用があります。GLP-1受容体作動薬以外には、高度肥満症に対して脳に働きかける薬が短期間処方されることもあります。なお、処方箋がなくても購入可能な内臓脂肪減少薬や、肥満症を効能・効果とする医薬品も販売されています。
高度肥満症、または肥満症に代謝性疾患(糖尿病など)を併発していて、他の治療を行っても目標まで改善しない場合に、外科療法(減量・代謝改善手術)が検討されます。胃の一部を切除するなどして、食べられる量を減らす、または、食べた物が小腸の一部を通らないようにバイパスを作り、体への吸収を抑えるといった変更を加える手術です。これらによって、減量効果とともに、代謝改善も期待できます。ただし、術後も定期的な受診は欠かせません。
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