Go to the page content
肥満と肥満症 サイエンス 肥満について 肥満症

肥満症、そして肥満に関連する疾患や症状を把握して正しく治療しよう

肥満症は疾患(病気)です。肥満症は肥満とは異なり、肥満に伴う疾患によって健康へのリスクが既に生じている状態です。では、肥満症ではどのような症状や健康リスクが起こるのでしょうか。ここでは、肥満症の原因や治療法も含めて解説します。

difference between obesity and obesity

肥満と肥満症の違い

肥満とは

肥満とは、体に脂肪組織が必要以上に溜まっている状態です。

かつて、脂肪組織は食事を摂ることのできない状況に備えてエネルギーを貯蓄するためのものであり、それ以外には体の内部の保護に役立つことのほか、あまり重要な組織だとは考えられていませんでした。しかし今では、脂肪組織の細胞は、食欲や炎症などにかかわる「アディポカイン」と呼ばれるサイトカイン(細胞が作り出す生理活性物質)を分泌していることが分かっています。そして肥満では、このアディポカインの分泌に異常が起こり、健康にさまざまな悪影響を及ぼしていることが明らかにされています。

なお、肥満に該当するかしないかは、体格指数(BMI)によって判定されます。BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で、日本人ではこれが25以上の場合、肥満に該当します。

 

肥満症とは

BMIが25以上の人、つまり肥満に該当する人で、かつ、肥満による11種の健康障害(合併症)※表1が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合には、「肥満症」と診断されます。

肥満症は、慢性疾患(経過の長い病気)の一つです。対処(治療)をせずにいると、例えば動脈硬化が無症状のまま進行してしまい、ある時、突然、心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる発作を引き起こすことがあります。つまり、肥満症は単に「太っている状態」ではなく、太っていることで健康リスクが生じていて、迅速な治療が必要な病気の状態ということです。

 

willpower or biology women exercise

肥満症の原因

肥満症は既に解説したように、肥満が基にあり、その肥満の悪影響が生じている疾患です。つまり、原因のおおもとは肥満ということです。

では、なぜ肥満になるのかというと、端的にいえば消費するエネルギー量を摂取するエネルギー量が上回るという、「エネルギーバランスの乱れ」が原因と言えます。ただし、指摘されることの多い「食べすぎ・飲みすぎ・運動不足」という単純なことではありません。エネルギーバランスの乱れが生じる背景には、本人では解決が難しいさまざまな原因があります。例えば、精神的ストレス、就業状況、居住環境、遺伝的背景、他の病気の影響などです。

詳しくはこちら

 

肥満症のチェック方法

BMIと体脂肪について

肥満症の検査として、まず、肥満に該当する状態かを判定するためにBMIをチェックします。次に、肥満に該当する場合は、体内の脂肪組織(体脂肪)がどのように分布しているかをチェックすることになります。

・BMIによる肥満の判定

先ほどお話ししたように、日本ではBMI25以上を肥満と判定します。

一方、海外に目を向けると、肥満による健康への影響は人種差があるため、判定基準は国によって異なっています。具体的には、世界保健機関(WHO)ではBMI30以上を肥満とし、BMI25~30は「Pre-obese(過体重)」としています。それに対して日本人を含む東アジア人は、軽度の肥満でも健康への悪影響が生じやすいため、BMI25以上が肥満とされています。

 

willpower or biology women exercise

 

 

・体脂肪の分布や量の評価

体の脂肪は、それが蓄積している部位によって、皮下脂肪と内臓脂肪に大別されます。この2種類の脂肪のうち、健康への負の影響がより強いのは後者で、とくに内臓脂肪面積が100㎠以上の場合に、影響が顕著になることが明らかにされています。

ただし、内臓脂肪面積を正確に測定するには大掛かりな器械が必要です。そのため、一般的にはウエスト周囲長を代用しています。日本人ではウエスト周囲長が、男性は85㎝、女性は90㎝以上の場合、内臓脂肪面積100㎠以上に該当することが多いため、この値が特定健診(いわゆるメタボ検診)にも採用されています。

なお、全身の体脂肪量(率)を大まかに測定可能な家庭機器もあり、日々の健康管理に役立てられています。

 

医療機関での検査

肥満症は疾患(病気)であるため、メタボ健診で異常を指摘された場合などは、医療機関での治療が必要です。

医療機関では、体脂肪の分布や量を、より正確に調べるための画像検査を行ったり、血液検査によって血糖・血清脂質、アディポカインの血中濃度を調べたり、既に腎臓や肝臓に異常が現れていないか、動脈硬化が隠れて進行していないかなどを調べたりします。

肥満症の治療法

肥満症治療の目的

肥満症の治療の目的は、肥満に伴う健康障害を予防・改善することです。そのために体重管理は重要な手段です。しかし、単に体重を減らすことだけが大切なのではなく、生涯にわたって健康的な生活を送れるようにすることが、肥満症治療の目標です。

肥満症はさまざまな原因が関与しているため、目標設定は患者さんそれぞれに合わせて決めることになります。

 

食事療法

摂取エネルギー量を減らすことは、減量治療の基本です。どれくらい減らす必要があるかというと、肥満症の患者さんでは25kcal×目標体重(kg)以下とすることが多く、高度肥満症では20~25kcal×目標体重(kg)以下にすることが多いです。

 

運動療法

運動療法は、体重の増加を抑制する方法として重要とされていて、減量という点での効果は限定的です。ただし、運動療法により、たとえ体重が多く減らないとしても、肥満症により生じる健康への悪影響は抑制されることが分かっています。

 

薬物療法

食事・運動療法の効果が不十分な時には、薬物療法が検討されます。医師から処方される薬としては主に、GLP-1受容体作動薬という注射薬が使われています。この薬は、食欲を抑えたり、胃から腸への食べ物の排出を遅らせたりする作用をもっています。

 

外科療法

高度肥満症(BMI35以上)、または肥満症に代謝性疾患(糖尿病など)を併発していて、他の治療を行っても目標まで改善しない場合に、外科療法(減量・代謝改善手術)が検討されます。ただし、手術で体重が減ればそれでよいということではなく、その後の治療継続も大切です。

肥満症について理解し、正しい治療を

肥満症の症状についてお話ししてきましたが、関節炎や月経異常などを除けば、ふだんは無症状であることが、この病気の特徴と言えます。もし、肥満症が明らかな症状となって現れることがあるとしたら、それは例えば、脳卒中や心筋梗塞の発作が現れた時です。そうなると命にかかわり、たとえ命が助かっても後遺症に悩まされることもあります。そうならないために、肥満と肥満症の違いをしっかり理解し、ご自身が肥満症に該当するのではないかと不安を感じたなら、早めに医療機関を受診しましょう。また、既に肥満症と診断されている方は、しっかりと治療を続けていってください。

参照資料
  1. 日本肥満学会編集、ライフサイエンス出版「肥満症診療ガイドライン 2022」
  2. 日本肥満学会編、ライフサイエンス出版「肥満・肥満症の生活習慣改善指導ハンドブック : 特定健診・特定保健指導必携 2022」
肥満と肥満症 サイエンス 肥満について 肥満症

関連記事

 

 

Pick Up コンテンツ

heart-problem

肥満症ペイシェントジャーニー

自分の健康について、「将来が気になる」、「誰に相談すればいいかわからない」など、お悩みはいろいろありますよね。肥満症ペイシェントジャーニーは、あなたの今の気持ちに沿って、あなたに合った方法を見つける、旅の地図です。

heart-problem

肥満症リテラシー検定

あなたは肥満症を知っていますか?肥満症は複合的な要因からなる慢性疾患です。この検定であなたの肥満症についての理解度を試してみましょう。

 

 

肥満症について相談できる医療機関

肥満症について相談できる医療機関

肥満症には体重を減らすための様々な治療があります。肥満症で悩んでいる場合は、病院に相談してみましょう。

 

PromoMats ID: JP25OB00247